Process Systems Engineering Laboratory
Department of Chemical Engineering
Kyoto University

Japanese English

学位論文リスト

年度別

2015 |2014 |2013 | 2012 | 2011 | 2010 | 2008 | 2007 | 2001 | 2000

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2015年度

宮林 圭輔
所属: 京都大学大学院工学研究科
題目: 気液スラグ流を伴う並列マイクロリアクタのスラグ長さ推定と設計法の開発
主査: 長谷部伸治 教授

 本論文は,T字混合部を有する気液スラグ流を伴うマイクロリアクタを対象として,スラグ長さ推定法と反応器設計法に関して検討した結果をまとめたものであり,得られた主な成果は以下の通りである.
(1)単一T字マイクロリアクタのスラグ長さ推定法の開発
単一のT字マイクロリアクタにおける気液スラグ流を対象として,気体または液体体積流量と,気体または液体の供給圧力変動挙動という,気液スラグ流に対し非侵襲的に取得される情報のみに基づいて,気体および液体スラグの長さを推定する手法を開発した.そして,その有効性を実験により検証した.
(2)液膜存在下での単一T字マイクロリアクタのスラグ長さ推定法の開発
単一のT字マイクロリアクタにおける気液スラグ流を対象として,マイクロリアクタ中の流路内壁面に液膜が生じる条件下で,気液体積流量と液体の供給圧力変動周期の情報のみから,スラグ長さと液膜厚さを同時に推定する手法を開発した.
(3)並列T字マイクロリアクタのスラグ長さ推定法の開発
4並列マイクロリアクタを対象として,上記1)で提案したスラグ長さ推定手法が適用できることを実験により明らかにした.さらに,圧力変動をフーリエ変換した情報を用いること,および並列流路の流量が均一化されるように分岐部を設計することにより,気液流れの分岐前の流量情報と,液流れの分岐前に設置した圧力センサーの情報のみから,各流路のスラグ長さを推定する手法を開発した.
(4)気液スラグ流を伴う並列マイクロリアクタの設計手法の提案
反応管各地点でのボイド率の時間平均値という概念を用いることにより,管型反応器モデルを用いて単一のT字マイクロリアクタをモデル化し,その集積体としての並列マイクロリアクタの設計手法を提案した.

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2014年度

中川 弘司
所属: 京都大学大学院工学研究科(第一三共(株))
題目: 医薬品製造工程における品質管理手法の開発
主査: 長谷部伸治 教授

 本論文は,固形製剤製造工程を対象とし,プロセス状態のリアルタイム測定情報に基づく品質管理を実現するために必要な迅速測定技術,オンラインモニタリング技術について検討した成果をまとめたもので,得られた主な成果は以下の通りである.
1)洗浄工程終了時における装置内残留薬物の高精度In-situ分析法の開発
 装置内残留薬物のIn-situ分析にはスペクトルを用いた手法が有用であるが,その推定精度は,そこで使われる機器分析手法やスペクトル解析手法に大きく依存する.本研究では様々な手法の組み合わせについて検討し,赤外反射吸収分光法と対象薬物の純スペクトルを重みとして用いた局所PLS法の組み合わせが最適と判断し,それに基づく高精度なIn-situ分析法を提案した.
2)固形製剤の混合工程における成分濃度の非破壊リアルタイムモニタリング手法の開発
 混合工程における成分濃度のリアルタイム測定分析手法としては,近赤外分光分析法(NIRS)が広く用いられている.本研究ではNIRSにおけるキャリブレーションセットの選定法,スペクトル解析手法,スペクトル前処理法および選択波長が予測誤差に及ぼす影響を検証し,高精度なリアルタイムモニタリング手法として,キャリブレーションセットに適用対象の混合プロセスにて得られたインライン測定データを組み込んだ,NIRSと局所PLS法を組み合わせた手法を開発した.
3)滑沢剤混合プロセスにおける滑沢剤展延状態のモデルフリーモニタリング手法の開発
 滑沢剤混合プロセスは,固形製剤の種類によらず打錠工程に必須のプロセスであることから,その滑沢剤展延状態のモニタリングには,製剤毎にモデルを構築する必要のないモデルフリーの手法の適用が望ましい.本研究では,滑沢剤混合プロセスにおけるMg-St混合状態のリアルタイムモニタリングが,NIRSあるいは熱浸透率センサーを用いることでモデルフリーで可能であることを示し,両手法の有用性を実生産設備を用いて検証した.

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2013年度

若林 敏祐
所属: 京都大学大学院工学研究科(東洋エンジニアリング(株))
題目: 内部熱交換を最適化した新型内部熱交換型蒸留塔(HIDiC)の開発
主査: 長谷部伸治 教授

 本論文は,より優れた省エネルギー性能が得られる,シンプルな構造の新型HIDiCについて検討した結果をまとめたもので、以下の結果を得ている.
1)熱交換段の組み合わせを求める簡易手法の開発
 濃縮部と回収部の1つの理論段間のみでサイド熱交換を行うHIDiCモデルを対象に,圧縮機動力・理論段数・サイド熱交換器の伝熱面積を一定とした条件下で,段の組合せがリボイラー負荷の削減率に与える影響をまず求めた.そして,得られた削減率を利用した,複数のサイド熱交換箇所決定問題に対する簡易な解法を提案した.
2)H-xy線図とT-xy線図を用いたHIDiC設計手法の提案
 通常のPonchon-Savarit法のH-xy線図に,可逆蒸留操作における塔内の熱的な挙動を表す可逆蒸留線や,これを参照しながら実際の塔内の熱的な挙動を表す操作軌跡線図を与え,更にT-xy線図を統合した線図を用いた,HIDiCの設計手法を提案した.
3)HIDiCの適用が望ましい系の特徴の導出
 上記2)で提案した設計手法と線図を用いて,原料組成,製品純度がHIDiCの省エネルギー性能に与える影響を明らかにし,HIDiCを用いることで大きなエネルギー削減が見込める分離対象の特徴を明らかにした.
4)装置コスト,運転コストを考慮したHIDiC実現可能性の検討
 新形態のHIDiCを実現するための装置構造を提案し,その装置構造のもとで商業規模の処理量を想定したケーススタディーを実施し,提案する新型装置が経済的にも工業界に受け入れられる可能性が高いことを示した.

Iftikhar AHMAD
所属: 京都大学大学院工学研究科
題目: Gray-box Modeling for Stable and Efficient Operation of Steel Making Process (鉄鋼製造プロセスの安定・効率的な操業のためのグレイボックスモデリング)
主査: 長谷部伸治 教授

 本研究は,連続鋳造プロセスの安定運転に不可欠な,タンディッシュ(鋳型上部の湯だまり)内温度の推定モデルの構築法に関する研究成果をまとめたものであり,得られた成果は以下の様にまとめられる.
1)タンディッシュ内温度推定グレーボックスモデルの提案
 二次精錬からタンディッシュまでの過程に対して精密な物理モデルを構築すると共に,物理モデルの出力と測定データの間の誤差を,部分的最小二乗法(PLS)あるいはランダムフォレスト(RF)法を用いた統計モデルで推定するグレーボックスモデルを提案した.そして,得られたモデルの精度を実データを用いて検証し,RF法を用いてグレーボックスモデルを構築することにより,タンディッシュ内温度を精度良く推定できることを示した.更に,物理モデルのパラメータを統計モデルを用いて推定する手法を提案し,この手法を従来のグレーボックス構築手法に組み込むことにより,推定精度を更に向上できることを示した.
2)タンディッシュ内温度の確率推定モデルの提案
 二次精錬終了時からタンディッシュまでを4工程に分割し,粒子フィルターの考え方を用いてタンディッシュ内温度の確率分布を推定する方法を提案した.そして,提案法を用いて予測精度を定量的に評価し,運転にフィードバックする考え方を示した.

金 尚弘
所属: 京都大学大学院工学研究科
題目: Statistical Modeling Method for Efficiency Improvement of Industrial Processes(生産プロセス効率化のための統計的モデリング手法)
主査: 長谷部伸治 教授

実用的なソフトセンサ設計手法の開発を目的とし,データの前処理,入力変数の選択,モデルの更新方法について,新規かつ有用な手法を提案し,その実プラントへの適用結果をまとめたものであり,得られた主な成果は以下の通りである.
1)データの前処理方法の提案
 各入力変数がソフトセンサの性能に与える影響を評価し,重要度の高い変数の影響を大きくする前処理法を提案した.そして,提案法を用いることにより,従来法に比べて精度の高いソフトセンサを構築できることを,数値シミュレーションと化学プロセスおよび医薬品プロセスを対象に確認した.
2)入力変数の選択方法の提案
 バッチプロセスから得られたデータからソフトセンサを構築する問題を対象に,同一バッチから得られるデータと異なるバッチから得られるデータの分散に基づいて,ソフトセンサ構築に適した入力変数のみを選択する方法を提案した.そして,医薬品プロセスにおける主薬含量濃度の推定に開発した入力変数選択方法を適用し,従来法よりも推定精度が大幅に改善できることを確認した.
3)Just-In-Time型ソフトセンサ構築手法の提案
 プロセス特性の変化や運転条件の変更により,ソフトセンサの推定精度は低下する.この問題を解決するため,プロセスの状態に合わせて適応的に類似度を決定できるJust-In-Time型のソフトセンサ構築手法を提案した.そして,提案した手法を化学プロセスと医薬品プロセスにおけるケーススタディにて確認した.

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2012年度

Jesus Rafael Alcantara Avila
所属: 京都大学大学院工学研究科
題目: Process Intensification in Distillation Sequences (蒸留プラントのプロセス強化)
主査: 長谷部伸治 教授

 蒸留プラントを対象としてヒートインテグレーションによるプロセス強化に関する研究を行い,以下の成果を得た.
1)内部・外部熱交換を考慮した蒸留プロセス合成法の開発:濃縮部冷却や回収部加熱がリボイラー負荷やコンデンサー負荷に与える影響を予めモデル化しておくことにより,最適な熱交換段の組合せを混合整数線形計画問題として定式化できることを明らかにした.そして,蒸留プロセスの最適合成問題を,上述した内部熱交換の最適化を内部に含む多階層組み合わせ最適化問題として定式化し,様々な対象に適用することにより,そのモデル化と解法の妥当性を示した.
2)圧力変化を考慮した複合塔を含む蒸留プロセス合成法の開発:塔中間段での気液の授受を行う構造を含む複数の塔からなる複合塔は,通常の蒸留塔からなるプロセスに比べて省エネルギー性に優れているが,塔頂と塔底の温度差が大きいため,さらに他の塔と熱交換のしにくい柔軟性に乏しい構造である.この点を考慮し,複合塔を構成している各塔の圧力を独立な変数と考えて最適化を行うことにより,設計の自由度を増し,より制約のない条件下でプロセス合成を行える手法を開発した.
3)多目的評価下での蒸留プロセス合成法の開発:蒸留プロセスの合成問題を多目的最適化に拡張し,年間総コストだけでなく,エネルギー消費量,CO2排出量,環境影響など様々な要素を考慮した問題として定式化した.そして,非凸な解空間であっても,均等に配分されたパレート解を導出する手法を提案し,その有効性を例題により検証した.

茂森 弘靖
所属: 京都大学大学院工学研究科(JFEスチール(株))
題目: 局所回帰モデルを用いた鉄鋼製品の品質設計と品質制御
主査: 長谷部伸治 教授

  鉄鋼製品品質の向上を目的に,Just-In-Timeモデリングの一種である局所回帰モデルを用いた鉄鋼プラントの品質設計手法および品質制御手法を開発し,以下の成果を得た.
1)局所回帰モデルを用いた品質設計システムの開発
 出力の値を推定したい入力変数(要求点)に近い過去のデータを重視した局所的な予測モデル(局所回帰モデル)では,要求点に近いデータを重視してモデルを作成するが,設計型の問題は望ましい出力が得られる入力変数を求める問題であり,局所的なモデルを利用する場合,どの入力点を基準にモデルを作成するかが問題となる.この点に関し,繰り返し計算を行うことで,この問題を解決したアルゴリズムを提案した.そして,開発した品質設計システムを実際の鉄鋼製品の品質設計(望ましい品質を得るための製造条件設計)問題に適用し,従来に比べ品質のばらつきの少ない製品が得られることを検証した.
2)局所回帰モデルを用いた品質制御システムの開発
 現実のプロセスの状態は,品質設計システムで導出した製造条件を与えても,望ましい製品が得られるとは限らない.この点をふまえ,入力変数の基準値,出力変数の目標値および操作量決定時までのプロセスの実績データから,その後の操作変数の最適な設定値を導出するシステムを提案した.提案されたシステムは,実績データベース,変数選択機能,局所回帰モデル作成機能,操作量決定機能からなる.そして,開発したシステムを,鉄鋼製品の材質(引っ張り強度)制御,厚鋼板の幅寸法制御および平面形状制御に適用し,それぞれ従来に比べ,ばらつきの少ない製品が得られることを明らかにし,提案手法の有効性を検証した.

具嶋 和也
所属: 京都大学大学院工学研究科((財)鉄道総合技術研究所)
題目: 鉄道車両の滑走防止を目的とした増粘着材噴射・検出システムの開発
主査: 長谷部伸治 教授

  鉄道車両の滑走防止を目的としてセラミックスをレールに噴射する増粘着材噴射装置の噴射状態をモニタリングする静電気式粉体流量センサーの開発と,ベンチ試験によるセンサーの性能評価,耐久性・信頼性評価,および現車試験によるセンサーの性能評価,滑走検知制御システムの開発を行い,以下の成果を得た.
1)噴射流量測定装置の開発:セラミックスが管内を固気二相流で流れる増粘着材噴射装置の噴射状態の検出を目的として,静電気式粉体流量センサーを新たに開発した.
2)ベンチ試験による噴射検出装置の性能評価:提案した噴射検出装置を鉄道車両に設置した場合を想定し,振動条件下でセンサーの噴射検出性能の評価をベンチ試験により行い,振動がセンサー出力に与える影響を明らかにした.また,増粘着材粒子の衝突によるセンサー内部の検出管壁の摩耗が検出感度に与える影響を実験により調べ,提案装置が15年以上の使用に耐えることを明らかにした.
3)現車試験による噴射検出装置の性能評価:開発した静電気式粉体流量センサーを鉄道車両に取り付けて走行試験を行い,実走行車両においても開発したセンサーで増粘着材噴射を検知可能であることを実証した.
4)滑走防止システムの開発:鉄道車両の車輪の滑走の検知から,増粘着材噴射による滑走防止,増粘着材噴射の検知までを行う滑走検知・制御システムを開発した.そして,提案したシステムを現車に搭載して滑走防止試験を行い,提案システムの有効性を検証した..

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2011年度

松澤 光宏
所属: 京都大学大学院工学研究科(日立製作所)
題目: フロー処理型マイクロ波化学反応装置の開発とマイクロ波効果の検証
主査: 長谷部伸治 教授

 本論文は,フロー処理型マイクロ波利用化学反応装置の開発とマイクロ波が反応に与える効果についてまとめたもので,得られた主な成果は以下の通りである.
1)熱流体および電磁界シミュレーションを併用したフロー処理型マイクロ波利用化学反応装置の設計法を開発し,その手法に基づき,エネルギー吸収効率の高い形状を有するマイクロ波利用化学反応装置を試作し,設計法の有効性を検証した.
2)これまで実現不可能であった,一定出力のマイクロ波を照射しながら,反応液の温度を一定に制御できるフロー処理型マイクロ波反応装置を開発した.そして,鈴木−宮浦カップリング等をモデル反応として,従来加熱と同じ温度条件で実験を行い,収率および転化率を比較した.得られた結果より温度一定条件下では,マイクロ波に反応促進効果は見られず,マイクロ波による触媒表面の局所加熱が反応促進の要因であることを明らかにした.
3)高効率かつ均等にマイクロ波を4分岐できる構造を,電磁界シミュレーションを用いて設計した.そして,薗頭カップリング反応をモデル反応として処理量を検証し,年間5000時間の稼働で,5.8 t/yearに相当する処理量を実現できることを示した.

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2010年度

河野 浩司
所属: 京都大学大学院工学研究科(三菱化学エンジニアリング)
題目: バッチプロセスの進捗管理とモデル埋め込みレシピの提案
主査: 長谷部伸治 教授

バッチプロセスを対象に,スケジュール作成段階において,予め想定した範囲の遅れに対して,予め指定したバッチ数以内でその遅れを吸収できるようなバッチ間バッファ時間を,特定の処理に要する時間が短縮可能という条件下で導出する手法を提案した。そして,その考え方で立案されたスケジュールで運転されているバッチプロセスに対して,遅延発生時の状況に応じた戦略を設定することにより,遅延発生後の復旧方法をオンラインで運転員に提示する運転支援システムを提案した。
 続いて,樹脂コンパウンドのレシピ設計を対象に,レシピ設計業務の観点から不確定要素に対応する手法を提案した。提案法では,蓄積された試作レシピとその客先評価結果を多変量解析し,原料配合比率から不良品発生率を予測するモデルを構築した。そして,独立成分分析に基づき成分の不良品発生率に対する配合修正指針モデルを構築し,統計モデルで予想される不良品発生率が低くなるように原料配合比率をレシピ設計段階で修正する手法を提案した。
 さらに,レシピ設計業務のマネジメントという観点から不確定要素に対応する手法を検討した。業務プロセスモデルを構築し,各業務内容の確からしさ(確信度)を利用して設計課題ごとに管理者が現状のレベルを業務個別に評価し,シミュレーションによって総合力を評価することによりレシピ設計業務の効率化にむけての意思決定を支援する手法を提案した。

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2008年度

藤原 幸一
所属: 京都大学大学院工学研究科
題目: 製品品質改善及び操業安定化のための生産プロセスのモデル化・最適化手法の開発
主査: 長谷部伸治 教授

本論文では,製品品質の改善,及び効率的かつ安定的な生産活動の維持という生産現場の抱える問題の解決に,統計モデルを応用し,生産プロセスの品質管理・改善のための統計モデルの利用,及びソフトセンサ設計のための新規統計モデリング手法を提案した.まず,産業界では製品品質が常に定量的な値として測定されているとは限らないことに着目して,たとえば良及び不良とだけ定性的に分類される品質情報を定量化し,統計モデル構築に組み込む方法を提案した.つぎに,今後,バッチプロセスの重要性が高まっていくことを鑑みて,バッチプロセスでの品質改善を目的とした統計モデル構築手法として,ウェーブレット解析を用いる統計モデル構築手法を提案し,さらにバッチプロセスの操作プロファイルを最適化する手法を提案した.リジン生産プロセスを対象としたケーススタディを通じて,提案する操作プロファイル最適化手法の有効性を確認した.続いて,効率的かつ安定的な生産活動には欠かせない技術であるソフトセンサに着目し,プロセス特性が変化しても推定性能を維持できるソフトセンサ設計手法を提案した.提案法では,変数間の相関関係の類似度に着目することで,精度の高いモデリングが可能であり,ケーススタディ及び実データへの適用を通じて,その有効性を実証した.

小野 仁意
所属: 京都大学大学院工学研究科(三菱重工業(株))
題目: 固体酸化物形燃料電池(SOFC)発電システムの動的最適化
主査: 長谷部伸治 教授

本論文は、固体酸化物型燃料電池(SOFC)を用いた発電システムの動的最適化に関する研究成果をまとめたものであり、以下の成果を得ている。
 1.SOFC発電システムの主要な箇所の温度、ガス組成を状態変数とした微分代数方程式モデルを構築し、微分代数方程式を代数方程式に変換する手法と逐次二次計画法を用いて、SOFC発電システムの起動時間を最短にする最適操作プロファイルを導出した。
 2.電池や熱交換器内の温度や組成分布、系外への放熱、機器間の輻射伝熱などを考慮したSOFC発電システム全体の詳細な物理モデルを構築し、10 kW級モジュールシステムの起動・停止操作時の実機データを用いてモデルの妥当性を検証した。
 3.実機データで検証した詳細な動的モデルを用いて、実機運転で考慮すべき様々な制約条件下での最短起動・停止操作を導出した。さらに、週単位起動・停止運転について、動的なエネルギー最小操作を導出し、起動完了状態を維持継続する場合に比べエネルギー消費量を35%に低減できることを示した。
 4.SOFCとガスタービン複合サイクル(GTCC)を組み合わせた100MW級の発電プラントを対象に、装置各部の温度、圧力、ガス組成に関する運用上の制約条件を満たしながら、ライフサイクルコストが最小となるSOFCとGTCCとの組み合わせ構造を提示した。

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2007年度

中西 俊成
所属: 木村化工機(株)
題目: 内部熱交換型蒸留塔に関する実証的研究
主査: 長谷部伸治 教授

濃縮部と回収部を分離し、濃縮部を回収部より高い圧力で運転することにより塔内で熱交換を行い、省エネルギー性能を高める蒸留塔(以下、内部熱交換型蒸留塔と呼ぶ)の実用化に向けて、理論と実験の両面から検討した結果をまとめたものであり、以下の成果を得ている。

T-Q線図を用いて視覚的に,また数値計算により定量的に、従来の蒸留塔と内部熱交換型蒸留塔のエクセルギー損失を比較検討し、内部熱交換型蒸留塔のエクセルギー損失が従来の蒸留塔に比べ大幅に少ないことを明らかにした。

濃縮部と回収部を独立に設定した条件で操作できる内部熱交換型蒸留塔の実験装置を試作した。そして、その装置を用いた実験結果をもとにシミュレーションモデルのパラメータを求め、実生産規模の内部熱交換型蒸留塔のサイズと製品組成、必要エネルギーの関係を明らかにした。

ベンゼン・トルエン系を対象に、内部熱交換型蒸留塔のベンチスケールプラントの基本設計を示した。そして、その基本設計を基に建設されたプラントの運転結果をもとに、操作性および省エネルギー性について検討し、従来の蒸留塔に比べ20%以上のエネルギー削減が可能であることを実証した。

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2001年度

清水 佳子
所属: (株)東芝
題目: モデル予測制御の発電プラント脱硝制御システムへの応用研究
主査: 橋本伊織 教授

モデル予測制御を応用した発電プラントの排煙脱硝制御を開発した.脱硝制御はグループ脱硝制御と軸NOx制御のカスケード構成となっている.それぞれの制御目的を達成するよう,モデル予測制御を拡張して使用した.

軸NOx制御の目的はNOx排出量を一定に保つことである.外乱をフィードフォワードで補償し,フィードバックにモデル予測制御を適用し,計算量軽減のため多周期型で実装した.また,モデル予測制御を2自由度型に拡張することにより,フィードフォワードとフィードバックの制御動作の重複を防止した.商用運転中に実証試験を行い,有用性と実用性を確認した.

系列脱硝制御に要求される,瞬時値と移動時間平均値とに課せられる制約を同時に満たす多目的制御を,モデル予測制御をオーバーライド型に構成することにより達成した.また,オーバーライド型モデル予測制御は実装前に安定性解析が可能であることを示し,数値例により従来制御に対する優位性を示した.

小河 守正
所属: 三菱化学株式会社
題目: ポリオレフィンプラントの高度制御システムに関する実証的研究
主査: 橋本伊織 教授

ポリオレフィンプラントの高度制御システムを,実用性を重視し研究開発したものである.この高度制御システムの基礎となるのは,重合温度などのPID制御であり,まずPID制御システムの包括的な設計方法を確立した.その上で,多品種のポリオレフィンを所定量だけ自動的に生産するための,高度制御システムを実現した.

PID制御システムの包括的設計方法では,PID制御システムにおける,プロセスモデル作成から,PID設定,ロバストPID調整,均流液面制御,制御性能の評価と監視およびフェイルセーフまで,統一された方法を示した.

ポリオレフィンプラント高度制御システムは,スラリー重合高密度ポリエチレンプラントを主たる対象として,製品の品質と生産量を直接制御することを目標に開発し,世界に先駆けて実現したものである.これは,解析的なアプローチによる適用範囲の広いプロセスモデル,不安定システムである重合温度プロセスのロバストPID調整方法,サンプル値制御を用いた組成制御,代表品質であるメルトインデックスの直接制御などから構成される.

Natthaphon Showchaiya (平成14年博士修了)
所属: 京都大学
題目: Inferential Control System Design for Distillation Process
主査: 橋本伊織 教授

化学産業界で広く利用されている多成分連続蒸留塔を具体的な対象として,製品品質をオンライン測定可能なプロセス変数から推定するためのモデル構築方法,および品質推定モデルを利用したフィードバック制御系の設計方法について検討した.

品質推定モデルの構築に関しては,推定制御系の性能を向上させるために,1)塔内温度設定値を変更してモデル構築用データを取得する方法が有効であること,2)塔内温度だけでなく,塔内圧力,還流量やリボイラー熱負荷を入力変数として用いることが有効であること,3)プロセスの動特性を考慮した動的モデルの利用が有効であること,4)モデル構築と制御系設計の繰り返しが有効であること,などを明らかにした.また,推定制御系の構築に関しては,塔内温度制御と組成推定制御とを組み合わせたカスケード制御系を採用することによって,組成推定値を制御量とするだけの単純な制御系よりも高い制御性能が実現できることを示した.さらに,蒸留塔が有するフィードフォワード効果を積極的に活用して制御性能を向上させるために,将来の製品組成予測値を制御量とする予測推定制御を提案した.カスケード制御と予測推定制御を組み合わせることによって,モデル構築と制御系設計の繰り返しを行うことなく,非常に優れた制御性能を実現できた.

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2000年度

佐々木 尚史
所属: 横河電機株式会社
題目: 抄紙機における坪量プロファイル制御の研究
主査: 橋本伊織 教授

抄紙機の坪量プロファイル制御において,新しい制御アルゴリズムとプロセス同定アルゴリズムを提案し,実際のプロセスにおける有効性を確認した.制御アルゴリズムについては,操作端の中間地点における出力をも制御量として取り込み,逐次的な二乗和最小化手法を用いた仮想スライスボルト対応最適化制御を提案し,従来制御で生じていたプロファイル上ののこぎり波を抑制できることを示した.さらに,熟練オペレータの手動操作方法を,疑似ファジイ理論を利用してアルゴリズム化したエキスパートファジイ制御を提案し,仮想スライスボルト対応最適化制御でも安定した連続制御が行えない抄紙機においても,良好な制御性能を達成できることを示した.また,プロファイル制御における重要なチューニング項目である位置対応とプロセス干渉を自動的に同定するアルゴリズムを提案した.これには,ウェーブレット変換,側抑制をもつニューラルネットワークのフィードバック演算,および3層ニューラルネットワークのバックプロパゲーションによる学習を応用している.

濱村 隆史 (平成13年博士修了)
所属: 呉羽テクノエンジ株式会社
題目: 連続晶析プロセスの最適操作に関する研究
主査: 橋本伊織 教授

本論文では,実際に工業界で用いられているDTB型連続晶析器を具体的な対象として,連続晶析プロセスの最適操作を支援するためのシステムの開発を目指して以下の研究を行った.まず,対象とする工業規模の連続晶析プロセスの挙動を表現できるモデルを構築した.このモデルを用いて,連続晶析プロセスで問題となる周期振動状態も含めて,連続晶析プロセスの最適な運転方法について検討した.

工業規模の連続晶析プロセスでは,所望の運転条件で安定化制御を行うのが困難である場合があるため,連続晶析プロセスの制御しやすさを示す指標を開発し,運転条件と設計変数が晶析プロセスの制御しやすさに与える影響について検討した.また,晶析缶内の不完全な混合状態を表現するためのコンパートメントモデルを構築し,晶析缶内の不完全な混合状態が最適な運転条件や制御しやすさに与える影響について検討した.以上のように,単に晶析プロセスの最適化を行なうだけでなく,最適運転条件と制御や設計問題との関係までをも検討している点が本研究のユニークな特徴である.

西 竜志(平成13年博士修了):
所属: 岡山大学現教官
題目: 分散協調型生産管理システムに関する研究
主査: 橋本 伊織 教授

多品種の製品を製造する化学プロセスでは,原料の調達,製造,販売の全体を考慮した生産管理システムの構築が望まれている.しかしながら,これら全てを同時に最適化するシステムでは,システム自体の規模が大きくなり,システム全体の把握が困難となる.

そこで,スケジューリングシステムにおいては,生産設備を構成する工程を単位としてスケジュールを作成する分散型の計算機システムを開発するとともに,その特徴解析を行うことにより,開発した分散型のシステムが異なった条件下でも望ましい解を導出する機能を有することを明らかにした.開発したシステムを現実の大規模な問題に適用することにより,提案したシステムの実用性を示した.

また,ラグランジュ分解調整法を用いた分散型スケジューリングシステムを提案し,分散協調型の意思決定手法について検討した.検討した手法をバッチプロセスの生産計画問題に適用することにより,原料在庫管理やスケジューリング,製品在庫管理を要素とする分散協調型の生産管理システムを提案し,その有効性を示した.

野田 賢(平成8年修士修了)
所属: 京都大学現教官
題目: バッチ蒸留プロセスの省エネルギー構造と動的最適操作
主査: 橋本伊織 教授

本論文は,バッチ蒸留プロセスの省エネルギー化を目的として,エネルギー低消費型バッチ蒸留プロセス装置と効率の良い運転法について検討した結果を取りまとめたものである.異なる構造を有するバッチ蒸留プロセスの分離性能について検討した結果,製品を還流槽およびリボイラー槽に貯留しながら全還流で分離する全還流型塔の分離性能が,多くの分離条件においてその他のタイプのバッチ蒸留プロセスの分離性能を上回ることを明らかにした.また,この理由が気液平衡関係の特徴から説明できることを示した.さらに,2つのバッチ蒸留プロセスがヒートインテグレーションした構造を有する多重効用型バッチ蒸留システムの分離性能が,連続蒸留プロセスに匹敵することをシミュレーションにより明らかにした.また,現実のプラントでの最適運転を実現するために,プロセスの状態に関する情報から,動的最適操作プロファイルを繰り返し計算,更新する最適運転支援システムを開発した.開発したシステムを多重効用型バッチ蒸留システムのパイロットプラントに実装し蒸留実験を行った結果,最適操作によって蒸留時間の大幅な短縮が可能であることを確認した.

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